7対応→反応→対応の連鎖-3今は何が出来るのか
場によってできることは制限される
子どもが実際にできること、周囲が子どもに望む事、そしてその場で実際にできることは場面場面で変動します。本当は静かにできるはずなのに、映画館に連れていったら盛り上がって大声で歌いはじめた。お葬式に連れていったら、大人は静かに座っていてほしいのに、子どもは初めて見るものがいっぱいで、お坊さんの真似をしてムニャムニャ言い出した、等のハプニングが色々と起こります。
これは子どもが普段とは違う一時的に例外な場面に遭遇した時に起こりやすいものです。
普段からの教育をしっかりしていても、子どもが知的に発達していても、あまり関係がありません。しかし周囲や親からすれば珍しい場面だからといって笑って済ませるわけにもいきません。なんとかその場を乗り切らなければならないのです。
子どもにとっての場の認識
子どもの側から考えてみると、普段とは違う場面に最初は戸惑いますが、初めて見るもの聞くものに興味が移り、心のテンションは高まってきます。いつもとは精神状態が違うのです。一つ一つが初めての連続でどうしたらいいのかわかりません。
物分りの良い子は親や先生に「どうすればいいの?」と聞いたりできますが、そのように急な展開について行ける子どもは稀です。何よりも自分の興味が最優先してしまい、思わぬ行動をとることがあります。子どもにとって初めての体験や珍しい体験は、それだけで興奮する要素を持っているのです。
空気を読む
少し成長した子どもなら、周囲が静かにしているので自分もしてみる。周囲がやっていることをとりあえず真似してみることができます。これも周囲からの声かけや説明が一言あるとかなり違います。周りの人も静かにしているから、静かにしていなきゃね、等の言葉で、少し冷静さを取り戻し周囲の人々の顔色をうかがったりできます。
いつもであれば自分で周りに合わせられる子どもも、興奮状態であればそれを一時的に忘れてしまいます。子どもの適応能力を過信しないことです。
園の行事などでも初めての機会は沢山あります。その時も始まった瞬間、子どもにとっては未知の状態に放り出されるわけです。入念な事前の説明と練習によってある程度は適応できますが、やはり本番では周りが見えなくなってしまいます。このような時にも、一言落ち着いて周りの人をよく見てみようと言葉をかけるだけで随分違う反応になります。
わかりやすい条件
場面によって要求されることは随分違います。お葬式では静かに座っていなければなりませんし、結婚式では拍手をしなければなりません。病院にいけば走り回るのは厳禁ですが、遊園地に行けば飛び跳ねて遊ぶ方が正常です。
子どもにとっては場面場面で対応を変えることは難しく、また経験も少ないために似たような場面を思い浮かべて自分で考えて行動する事もできません。何よりも大事なのは事前の説明です。
それをできるだけ子どもにわかりやすいルールで、今日だけだという時間設定も含めて教えます。その場限りの例外的な事態なので、次にもできるようになることは目的ではありません。今日を子どもが無事乗り切ることが重要なのです。
普段の教育やしつけと違う部分は、わかりやすい単純なルールで「今日だけね」ということなのです。多くを望めば子どもは混乱して失敗します。そして再学習する機会は当分の間まわってこないのです。これでは子どもも自信がなくなってしまいます。「ここにいる間は静かに喋ること」や「じっと座って待っていてね」と最低限のことだけを子どもに要求するようにしましょう。
今できる対応
事前の説明にもかかわらず、子どもが暴走しテンションが高まってしまった場合は、仕方がなく子どもを外に連れ出してみることもあるでしょう。しかし一方的に責める前にとりあえず子どもを落ち着かせましょう。そしてもう一度話をして再チャレンジするのです。
一番やってはいけないことは、その場で子どもを叱りだすことです。子どもはテンションが上がって舞い上がっているところへ怒られる事でわけがわからなくなってしまいます。効果がない上に、叱っている姿を含めて周囲に迷惑をかけてしまう事もあります。
しつけは次に繋がるからしつけなのです。くれぐれも大人の側が興奮して大声で子どもを叱ってしまうようなことは避けてください。
時と場合による
このような経験で子どもに学んでほしいことは、ただ一つ、時と場合によって行動を変えなければならないことがある、という事実です。
他の場所では許されることが許されない場合もある。逆に他の場所では許されないことが一時的に許される場合もあるでしょう。子どもにとって場面の区別はつきにくいものです。その理由がいつもと違う場面だから、と子どもに理解させることが重要なのです。
子どもはそれによって、見知らぬ場所や場面に遭遇した時に、多少の緊張も含めて大人の指示を仰ぐようになります。いつもと場面が違うことを子ども自身が判断し、わからない時に自分から「どうすればいいの?」と聞けるようになることが大事です。子どもに場面場面で、その場だけのルールがある、と理解させることができれば良しということです。
その時々の最善策
場面場面でとれる最善策は違います。不慣れな場所だと一緒にいる大人でさえどうすればいいのかわからない場合もあるでしょう。ここで大人が不安がっている所を子どもになるべく見られないようにしましょう。大人があたふたと慌てていては、子どもはどうすればいいのかわからずパニック状態になってしまいます。
親も先生も子どもも一緒に芋掘りに行ったとします。新任の先生は初めての行事引率の体験で大変でしょう。親も自分の子どもの頃の記憶を思い出そうとしますがうまくいきません。子どもはテンションが上がって大騒ぎです。
まずは一連の流れを確認し合うことからはじめましょう。そしてどんなルールで、どこまで自由にやっていいのかを全員が理解するのです。他にも様々な例外的な事態が子どもの頃は目白押しです。一つ一つの場面をうまく乗り切って、思い出として残るようにしていきましょう。
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