「私もそう思う」関係を深める言葉

「私はこう思う」という言葉のバリエーションで、特に一緒の意見の場合に「私もそう思う」と使います。これは子どもとの関係を作る上で非常に大事な言葉です。

使用目的

子どもにとって大人はいつも自分のやりたいこととは別のことを言う生き物です。「あれをしなさい」「これをやっちゃだめ」「違う」「それはおかしいよ」「恥ずかしいよ」等々。

成長の途中なので間違いが多いことはしょうがないのですが、あまりに連続すると「誰も自分のことをわかってくれない」という疎外感と孤独感、「僕はダメな人間だ」という劣等感と絶望感で強すぎるプレッシャーが生まれてしまいます。

また「私もそう思う」は正解や良いことをした場面以外でも使います。ほんの些細なことでもかまいません。一緒の思いを持っていること、感情を共有していることを知らせることで、安心感と信頼感が生まれるのです。

重要なことは最終目標は「意見が合ったか合わないか」ではなく、お互いが同意できるように歩み寄る、というプロセスです。「そう思った」という言葉を求めて子どもが自分の意見を修正していけることが大事なのです。

メリット

「私もそう思う」と聞かされることで、自分が間違ってないこと、怒られないこと、変じゃないことをさりげなく知ることができます。

大人でも手探り状態で悩んでいる時に「私も前からそう思っていた」と聞かされればホッとするでしょう。子どもは毎日が手探り状態なのです。開き直って能天気に見えるようでも心のどこかで不安感を抱えています。

同意することで「あなたは間違っていない」ことを伝えるだけではなく「私はあなたの仲間、味方だから心配しなくていい」というニュアンスを、シンプルに短く伝えることができます。

デメリット

イエスマンのようにハイハイと何でもかんでも賛成していたら、間違いを指摘されることが苦手になってしまいます。いつもは違う意見を持っている人間からの、たまの「そう思う」だからこそ効き目があるのです。

依存心を減らし、安心感だけを与えるのが理想ですが、伝え方のニュアンスによっては「大人が僕の味方なんだから何をやってもいいんだ、許されるんだ」と増長を招くこともありえます。調子に乗りすぎないように注意しましょう。

必要になる場面

過剰に使わなければ、大人の側の感じるままに飾りなく同意の意を示すといいでしょう。下手な演技で不自然な同意をされても、すぐにばれてしまいます。

落ち込んでいたり、寂しがっている時には一時的にでも味方になってあげたいものですが、それでも自分の意見を曲げてまで同意しても、結局は後で訂正することになりかねません。

「私はそう思う」という言葉が生きるためには、普段からの「私はそう思わない」という積み重ねの延長線にあることを忘れないようにしましょう。

使用例

「そうそう」
「私も前からそう思ってたよ」
「やっぱりそう思うよね」
「同じことを考えてたね」

使用後の注意点

「私はそう思う」の「そう」が何を指すのか明確にしておかなければなりません。そのためにも詳しく正確に言い直すのもいいでしょう。

特にいくつかの文脈が絡み合っている場合は、いらない誤解を招くことにもなりかねません。「お皿が汚れてたからゴミ箱にポイしたの」と言われて「そう思う」だけでは全体を肯定したことになります。「お皿が汚れていたこと」はそう思う、でもゴミ箱に捨てるのはそう思わない、ということをはっきり区別して伝えましょう。

また「意見が違う」ということと「間違っている」ことの区別を大人の側がきちんとつけてください。意見が違うからという理由で怒られたり叱られたりすれば、次から子どもは自分の意見を言わなくなってしまいます。

意見や感想が違うことはしょうがないことです。行動を正す方法としては「意見は違ってもそうしない方が良い」か「意見を変えてみよう」のどちらかです。意見自体を否定するような口調にならないように注意しましょう。

「そう思う」という言葉が正解か間違いかという違い以上の、暖かみを含んだ言葉であることを忘れないでください。

応用

自分からだけでなく子どもの側からも「そう思う」という言葉が出るようにしましょう。そのためには、大人の側が積極的に自分の感情や意見を伝えることです。

なかなか「そう思う」が出ない時には「私はこう思うけど、どう思う?」という形式で聞くことも有効です。

また意見や感想は現在のものだけが対象ではありません。「前にどう思った」「先にこうしようと思っている」等の過去や未来の話でも意見や感想を述べあい、同意ができるようになるといいですね。