「教えてちょうだい」相手を知る言葉

相手を知るために一番大切な方法は「教えてもらう」ことです。こちらから様子を観察したり予想したりするよりも、ダイレクトに相手の口から聞く事で情報も増え、今までわからなかったことがハッキリしてきます。

使用目的

この場合の「教えてちょうだい」の言葉は、ズバリ聞きたいこと以外でもかまいません。いろんなことを「こちらが知らない、わからない」という態度で、子どもに聞いてみるのです。

「どうしよう?」と違うところは一緒に考えるのではなく、答えを全面的に子どもにゆだねるということです。これで子どもは余計に頭を使って考えなければなりません。いつもより責任を持って答えなければなりません。

本人にとっては無意識でしょうが、この「大人に何かを教える」という行為は様々な変化を子どもにもたらします。自分が持っている情報だけで判断し、答えを導かなければならないからです。

この質問への答えから読み取れるものは、単なる質問の内容への答えだけではありません。答えをよく聞いてみてください。その問題への子どもの理解度、関連する知識、関心の度合い、意見や嗜好が読み取れるはずです。

「どうやって子どもが答えを出したのか」その過程に注意して答えを聞いてください。これはその後の学齢に達してからの勉強の方法でも、間違った答えから子どもが「何を知らないのか、間違って覚えているのか」を知る場面でも必要になります。

メリット

大人から「教えてほしい」と言われることは、子どもにとって嬉しいことです。自分の方が優位に立った気分にもなりますし、頼りにされている自信もつきます。

単に「これを知ってる?」「もうそろそろ覚えた?」と聞かれることは、子ども扱いされているようで、あまりいい気分にはならないでしょう。そこには若干の「わからないかもしれないけど」「まだ無理かもしれないけど」というニュアンスが入ってしまいます。

ですが「教えてちょうだい」だと馬鹿にしている意味が薄れます。相手の知らないことに答えるという自信が、子どもの脳をフル稼働させるわけです。

デメリット

「教えて」という態度を多用しすぎると、子どもは調子に乗って相手の大人を馬鹿にし始めます。乱用のしすぎは避けるようにしましょう。

馬鹿にしている大人相手だと最初の「子どもに責任を持って答えを出させる」という目的も果たせなくなります。子どもは無責任で適当な答えを出し、その過程で知恵を絞ることもしなくなります。

また「教えてちょうだい」という態度がわざとらしかったり、露骨すぎると子どもは警戒します。「この人は本当は知っているのに知らない振りをしている」と思われることはプラスになりません。

必要になる場面

言葉や文法が未熟な時期は、まだこの方法を使うのは早いでしょう。言葉で様々なニュアンスが伝え合える4~5歳の頃から徐々に「教えてあげる」経験をさせてあげましょう。

子ども自身のことを教えてもらうのは少し意味合いが違います。大人から見て子ども本人のことは「知らなくて当然」だからです。(あくまで子どもの視点から見て、ですが)

それよりもっと一般的なこと、常識的なことを「教えて」もらいましょう。それについて子どもがどう考えているのか、何処までわかっているのかを読み取ることができます。

家の中にいても外へ出かけても、質問する内容は沢山あります。もちろん大人にとってはわかりきった当たり前のことばかりですが、あえて子どもに聞いてみることが質問の目的です。

大人が「わかっていて当然」「あたりまえのこと」と思っていることで、子どもが何故か拒否したりできなかったりすることがあります。そんな時に、この質問をしてみて子どもがどう理解しているのかを聞いてみましょう。

使用例

「横断歩道をどうやって渡るのか教えて」
「何で毎日歯磨きしなくちゃいけないの?」
「何で雨が降るんだろう。教えてちょうだい」
「どんな動物がいるのか忘れちゃった。何がいるんだっけ?」

使用後の注意点

一番重要なことは最後まで「わからないから尋ねた」という姿勢を崩さないことです。これは今回だけでなく次回以降の子どもとの関係に関わってきます。

だから子どもが変な答え、明らかに間違った答え、道徳に反した答えをした時にも、「それは間違っている」「そういう考えは止めなさい」と軽々しくは言えないのです。

子どもに考え直してほしい時や改めてほしい時には、「でも私はこう思うけどな」と違う意見として述べたり、「それだとこんな時に困るんじゃない?」と矛盾点をついて子ども自身に再考させるようにするといいでしょう。

応用

一度教えてもらった答えを大人の側は忘れないようにしてください。それは「この時期の子どもはこんな意見、知識だった」という指標になります。

以前に変な答え、子どもなりの答えを出した質問について、しばらくたって「教えてくれたことを忘れちゃったから、もう一度教えて」と質問した時に子どもは何と答えるでしょうか。

違う答えを言ったからといって責めてはいけません。「意見や答えを変えたら怒られる」という前例を作らないようにしましょう。好意的に成長の証として捉えておきましょう。

ここをどうフォローするかで、知識を吸収する柔軟な思考を育てるのか、間違いを認めない頑固な思考になるのかが分かれてしまいます。

少なくとも「あの時はこんなことを言っていた。おかしいね」と思い出話で笑うことはやってはいけません。