4一対一の対応の技術-1目的はどこにあるのか?


安全という大前提

さて一対一で子どもと向き合うことになりました。あなたの力量が問われます。あなたの心の中にある優先順位は何ですか?教育?世話?しつけ?色々あるでしょうが、まずは全てを脇へどけておいてください。子どもと接する場合に全てのことにおいて優先しなければならないことがあります。それは安全です。

子どもはどんな場面でどんな事故や病気に関わらないとも限りません。それはなんとなく安全だと思っている行為の一つ一つに含まれます。子どもの能力と発想の転換は時として大人を驚かせますが、それは良い方向ばかりとは限らないのです。絶対大丈夫だと思っている場面で子どもは飛んできた虫を捕まえようと走ってきたトラックの前に飛び出します。絶対安全だと思っているクレヨンを、一本丸ごと色がきれいだという理由で飲み込んでしまったりします。

室内だろうと大人がついていようと変わりません。充分に離して置いたストーブに向かって突進する子もいます。滑り台の上から階段方向にジャンプしてしまう子どももいます。そんな時、あなたは咄嗟に事故を防ぐことができるでしょうか。事故を防げる自分の位置、視線が重要です。万が一の時あなたの伸ばした手が子どもに届くかどうか、今一度見直してみて下さい。

教育的に

次に教育的な視点に立って子どもを見ていきましょう。乳児から幼児へ、子どもは自分なりに周りの真似をしたり試行錯誤しながら成長を続けます。しかしどうしても自分ひとりでは乗り越えられない壁がいくつも立ちはだかっています。それを上手く導くことが教育的な意味合いです。

基本はいうまでもなくルールや仕組みをわかりやすく説明し、できた時に褒めて、できなかった時にやり直しを要求し、やらなかった時に叱るのです。逆に言えば教育者の立場でできるのは、たったこれだけの行為なのです。どのくらいわかりやすく話すのか、子どもの知っている単語を駆使し、わからない単語を説明し、理解度をはかりながら説明をします。そしてどれくらい褒めるのかもその子どもの力量、能力に左右されます。できて当たり前のことを何度も褒める必要はありませんが、急に褒められなくなれば子どもは不思議に思います。少しずつ褒め方を変えて、最後には褒めなくてもできたことを褒めて仕上げとします。

やり直しの要求も、本人のやる気、その日の元気、習熟の度合いによっては、一から説明しなおしたり、また明日ということにしてもかまいません。やる気を無くさせてしまうことが一番怖いことです。今までに練習した全てが無に帰する可能性もあります。叱る場合も同じです。本当にできることをやってないのか、できなくて困っているだけではないのか確認する必要があります。要求が本当にその子どもの発達度合いにあっているのかを常に意識して指導をしましょう。

支援的に

少しずつですが能力は伸びていきます。しかしまだまだ日常生活においてできないことは山積です。それに関しては教育的な視点だけではなく、支援する、サポートする視点が必要になります。支援と世話をすることは違うのでしょうか?これは言葉の意味の問題ですが、一から十まで世話をすることを支援とは言いません。

一つの行動の中でも、それらは幾つかのより小さい単位に分けられます。その内で、できる部分は自分で取り組んでもらい、できないことをサポートするのです。食事一つをとっても、子どもには調理は無理ですので、周りが用意することになります。これは全てがサポート対象になる部分です。食べるという行為も、フォークやお箸に刺してあげれば自分で口まで運べるかもしれません。これは一部を支援する例です。口に入れてからは「もっと良く噛んで」「喉につまらないように」等と助言するだけになります。これは教育的なプロセスに入ります。

少しずつできるようになると共に、できない部分をサポートしていくことで生活をスムーズに行うのが支援の目標です。するかしないかの二択ではありません。もっと細かい範囲で場合分けしてできる部分を増やして行き、できない部分が放置されないように細かく見ていきましょう。

情操的に

子どもは教育を受けて成長していくだけのロボットではありません。発達部分だけを追っていると見えない部分が出てきます。子どもも感情を持ち、それを燃料にして発達を続けたり、課題に挑んだりするわけです。感情面を無視して通常の生活はできません。

音楽を聞かせたり、習い事をしたりの情操教育も良いでしょう。しかしそれは、あくまで教育なのです。もっと小さな日常に情操的な面はいくらでもあります。また食事を例に出しますが、食事には食事のマナーや上手な食べ方を練習する教育的な場でもあり、体に必要な栄養素を摂取するための支援的な場でもあります。でもそれ以外に、親や友達と楽しく食事をする楽しみの時間でもあるべきなのです。

この視点は忘れられがちですが、子どもは子どもなりに色々な面で頑張って生活を送っています。トイレも食事も入浴も手洗いも全てがトレーニングの場であったら、子どもの生活はなんと張り合いのないことでしょう。生活が楽しいからこそ、子どもはより快適な生活を送れるように練習と試行錯誤をするのだということを忘れないでください。

偏らないバランス

絶対に安全だという前提の上で、さて教育的、支援的、情操的な面をどのようにして組み合わせれば良いのでしょうか。もちろんどれも必要で、できれば全ての面で充分な配慮ができることが望まれますが、大事なことはバランスを忘れないことです。偏り過ぎて他の視点を忘れてしまわないように注意しましょう。

一例として入浴をあげましょう。入浴中は泡や水で滑りやすく、転倒や火傷や溺れる危険が大きく安全に最も気を付けなければならないところです。そして自分で体や髪を洗うトレーニングをする場所でもあります。また清潔さを保ち雑菌等を洗い流すため、子どもが良く洗えない部分をサポートし洗ってあげる場所でもあります。最後に水遊びをしたり親などとスキンシップをとる楽しみな場所でもあるのです。どのような行動にも、このような複数の側面があります。それが偏り過ぎないようにしながら、子どもの生活を見守りましょう。

短期的な処置

将来的な目標を脇に置いてみても、子どもの生活はイベントとハプニングの連続です。その日その日を無事におくることも大事なことです。成長の度合いにしても三歩進めば二歩下がります。できるようになるかならないかの微妙な時期を経て定着していくのです。

一日二日で何かが大きく変わることはありません。子どもに過度の期待や要求をしないようにしましょう。その日を無事に終えただけで、子どもにとっては価値のある一日なのです。その一日の体験は次の日につながります。その積み重ねの上に人格が築かれて個性が育っていくのです。

もしも怪我をしたならば、次から怪我をしないように教え、消毒し絆創膏を貼り、泣き止むまで甘えさせてあげましょう。そして励まして一日を終えるのです。

長期的な展望

さて長期的な展望と目標を考えましょう。怪我の例でいうなら、次からは怪我をしないように危ない場所に近寄らない、危険な行為を自ら避けるようになれることが長期的な目標です。その他にも一つ一つの長期的な目標がありますが、それを短期的な処置と関連付けて考えるようにしてください。

その子どもの半年後、一年後、三年後、五年後を想像してみてください。どんな風に成長するでしょうか。どんな性格になるでしょうか。どこまでの能力を獲得しているでしょうか。そのイメージを忘れないでください。

その希望通りにいくかどうかは別にして、逆算することはできます。そのイメージの姿になるために、今現在の子どもに必要な教育とサポートはどのようなものでしょうか?勝手にできるようになることもあります。試行錯誤したままのこともあります。人から言われて初めて問題に気づく場合もあります。それも念頭に置きながら子どもと向き合うことを忘れないようにしてください。

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