子どもの好き嫌いを治すには

好き嫌いがあるのはおかしなことじゃない

人間の舌は甘さ、辛さ、酸っぱさ、苦さなどを判別できます。(最近ではこれに「うま味」を加えることも多いようですが)これは味覚異常などを除けば、ほとんどの人に備わっている能力です。

この味覚のセンサーはいったい何のためにあるのでしょうか?まだ冷蔵庫や電子レンジがない時代、もっと遡って原始的な生活を想像してみてください。

古代の生活では必要な栄養分、カロリーが大きいものを人間は「甘く」感じることで判別していました。同じく足りないと困る塩分、ミネラル分は「辛く」感じることで判断しています。

発酵や熟成などが人の手でコントロールできなかった時代には、「酸っぱいもの」は腐ったもので「苦いもの」は毒だったのです。

だから乳幼児が酸っぱいものや苦いものを嫌がるのは、生物の本能から言って当然のことなのです。

好き嫌いがない、ということ

では好き嫌いする子としない子がいるのはどういうことでしょう?好き嫌いしなくなるには三つのパターンが考えられます。

一つ目は舌のセンサーが敏感すぎずに味覚以外を重視する子どもの場合です。例えば実際の味より「見た目」や「匂い」で判断してくれれば、細かく刻んだり色づけしてごまかすことができます。

二つ目は我慢強い子の場合です。おいしいとは思えなくても、怒られるから、残してはダメだから、と「食べることがあたりまえ」になっていくパターンです。

三つ目は学習によって嫌いな食べ物が普通に、又は美味しく感じるようになるパターンです。園や小学校で行われる食育はこれを目的にしています。

怒られながら食べるご飯はおいしくない

よそ見しないで食べなさい、残さずに食べなさい。全てのママの心の声ですが、毎回の食事中に連発するのはちょっと待ってください。

食事の時間は楽しく過ごすことも重要です。そうでないと食事にどんどんマイナスイメージを持ち、好きだった食べ物も普通に、嫌いになっていくものです。特に幼児期の感覚は印象に大きく左右されます。

特に好き嫌い以外にも食事時間には注意したいことがいっぱいです。こぼさないで、静かにして、よそ見しないで、急いで食べて、よく噛んで、手遊びしないで、クチャクチャしないで等々。もちろん必要な注意はしてあげるべきですが、怒りっぱなしで食事が嫌になることのないように。

食事の手本を見せてみましょう

テーブルマナーの話ではありません。大人と子どもでは食べてるメニューが違う場合も多いのですが、それでも「好き嫌いしない食事」の手本を見せることはできます。

ポイントは大人が「なんでもおいしそうに食べる」です。子どもは大人のまねをしたい、大人ぶってみたいのです。

よくないのはワザとらしく子どもに聞かせることです。「こんなにおいしいのに○○ちゃんが食べないのはもったいないなぁ」等と言っても、子どもはそれが「自分に食べさせるため」の演技だと知っています。

大人が本心から美味しそうに何でも食べ、素直に感想を言うのです。テレビのグルメレポーターのように饒舌でなくてもかまいません。「どういう風においしいのか」を口に出して言ってあげてください。

味覚の学習

甘い、辛い、酸っぱい、苦い程度の分類しかない幼児の味覚の世界ですが、大人の場合はもっと複雑に味を感じていることでしょう。

「甘酸っぱい」「ほろ苦い」「少し辛みがあるから甘さが引き立つ」「甘さの後でサッパリとした酸っぱさがある」等、味覚はどんどんバリエーションが広がります。それには体験と学習しかないのです。

リラックスした楽しいムードで、まずは大人の真似をして食べ物を口に入れる。それがどんな味なのか大人と感想を交換しあう。そうして我慢して食べることから、喜んで食べることへと変化していくものです。