「私はね」関係を深める言葉

子どもに様々なことを質問することは意識せずともやっているでしょう。でも、あなたのことを子どもに話していますか?人間関係は一方的な質疑応答だけではありません。「私はね」と自分の情報を相手に提供してみましょう。

使用目的

子どもは放っておくと自分の話したいことを話したい時に一方的に話します。また他の会話でも一方的に質問される側にまわることが多いものです。何で?どうして?と自分から質問する子どもも、それは相手固有の情報ではなく一般的な知識、不思議に対する回答を求めているだけです。

この状態が長く続くと、いつまでも子どもは「自分が主人公」の世界から抜け出すことができません。反抗期に入れば他の人の話に耳を傾ける余裕もなくしてしまいます。その前に「相手の話を聞く」「相手にも自分と同じように独自の感情や世界がある」ことを理解できるようにしましょう。

一方的な子どもの質問に全て答えるのは難しいものです。ですが、最初からこちらの切り口でペースを保って話すことで、余裕を持って会話の「やりとり」の練習をすることができます。

メリット

自分とは違う意見を他人が持っている、ということをきちんと理解することが第一の目的です。どうしても子どもは「自分だけが世界でものを考えている」という時期を過ぎても、「他の人も自分と同じように世界を見ている」と思い込むものです。

また大人個人の思い出話を聞くことで、大人が長い年月で様々な体験をしていることを知ります。大人が自分よりも経験が豊かであることを理解すれば、その後の「何で大人の言うことを聞かなくちゃならないのか」という疑問にも自分で答えを出せるかもしれません。

また大人の体験談や意見の内容は、子どもにとって新鮮で「予想もできなかった」ことが多いものです。結末や結論のわかりきった話を聞くよりも、パッと聞いただけではわからない話を理解するまで聞くことで、会話の理解力も深まります。

デメリット

「私はね」で始まる相手の話を最後まで聞くことは、最初のうちは子どもにとって苦痛に感じるものです。興味を持てない話であれば「そんな話はどうでもいい」と思い、会話自体を嫌がることにもつながりかねません。

また、あまりにも子どもと大人で意見や感じ方が違う場合に、「大人の言うことは自分とは違う」と最初から壁を作ってしまうこともあります。こうなると、その後に話す言葉に重みがなくなり、内容も耳を素通りしてしまいます。

「大人の失敗談」や「ハメを外した体験」等の話を子どもは喜ぶかもしれませんが、その話をあなたが知らないところで他の人に勝手に話すかもしれません。内容を真似したり自分の思い通りに曲解してしまうかもしれません。

他で話されても困らない、真似されても困らないような内容を、子どもが嫌がらない程度に「少し頑張れば理解できる」範囲で話をするようにしましょう。

必要になる場面

子どもが自分と他人を別なものと認識し、会話の途中に「僕はね」「私はね」という言葉が多くなってきた時期が狙い目です。

また子どもが自分勝手な理屈を振り回したり、王様のような態度を取ったりすることがあれば、そこで自分はあなたとは違う意見を持っていることを伝えてあげてください。

子どもは自分の人生しか生きていませんし、他人の体験から学ぶというトレーニングを行っていません。なので(大人から見れば)ほんの少ない自分の人生経験を元に行動方針を決めるわけです。

自分が一度失敗してみなくても他人が失敗した体験を聞いて学ぶ、ということを早い時期から練習するようにしてください。

使用例

「私はこう思う」
「私も前にこういうことがあった」
「私は君と違ってそんなことはしない」
「私も同じことを使用として失敗した。だから君はやらない方がいい」
教訓めいた話でなくても単なる思い出話でも有効です。

使用後の注意点

まず話の内容をきちんと理解しているのか確認してください。話半分にしか聞いていないようであれば、次はもっと短くわかりやすい言葉で伝えます。

もちろん一方的にこちらの話をするのではなく、こちらが話したら子どもの意見を聞く、子どもの体験を聞いたらこちらも体験談を話す、というようにバランスがとれるようにしてください。

慣れないうちは私、あなた等の一人称、二人称がごちゃ混ぜになり混乱することがあります。こちらも根気よく「○○ちゃん」「ママ」「先生」等の言葉に置き換えながら、言いたかったことを理解してくれるように導きましょう。

応用

「あなた」という人間の感情や体験をある程度聞かせた後は、次に「私はどう思ってると思う?」「私は何て言いたいと思う?」と尋ねてみましょう。クイズ形式でもかまいません。

突飛な答えが返ってきても怒らずに訂正してあげましょう。他人の心を理解する力はこのようなトレーニングから伸びていくものです。

また「他人はあなただけではない」ことに気付かせることも重要です。他の人にも協力してもらって沢山の話が聞けるようにしましょう。世の中の大勢の人がそれぞれ別々の考えや体験を持っていることを正しく理解するのはまだ少し先の話ですが、下準備として「あの人は何を考えてるんだろう」と疑問に思ってもらうことが重要です。