「何してるの?」関係を深める言葉

子どもが何かいけないこと、悪いことをしそうな時に事前の制止として「何してるの!」ということがありますが、それとは違う軽いニュアンスの「何してるの?」という言葉です。

使用目的

子どもの語彙が発達しきらない時期には「何してるの?」は様々な意味を表します。「何を考えてるの?」「今から何をするつもりなの?」「今まで何をやってたの?」「何が見えているの?」「何が聞こえてるの?」「何か異常はない?」「今どんな気分?」等々です。

もちろん他の言葉に置き換えて理解できるのであれば、そちらを個別に使えばいいのですが、重要なのは単なる状況確認だけでなく「私は今あなたのことに興味を持っている。もっと詳しく知りたい」という思いを伝える言葉だということです。

大人も子どもも「誰かに興味を持たれる」ことは悪い気はしないものです。(もちろん詮索されすぎれば別ですが)適度に質問をされることで嬉しい気分も生まれます。

メリット

「何してるの?」と聞かれれば、質問ですので答えなければなりません。普段の子どもは自分の言いたいことだけ言いたい時に表現しますが、これは表現の抜き打ちテストのような物です。

相手に自分の状況を伝えるために自分が知っている言葉や身振りを駆使しなければなりません。表現力の向上にはもってこいです。

何よりも「何をしているのか」という問いに答えるためには自分のことを客観的に振り返らなければなりません。このプロセスは他の場面では中々必要にならないので、定期的に自分は何をしているのか考えることはよい刺激になります。

デメリット

最初の頃は「何してるの?」に頑張って答えようとしていた子どもでも、途中からいい顔をしなくなるかもしれません。

「ないしょ」「ひみつ」から始まり「嘘をつく」ことが始まるでしょう。それは意図的にせよ無意識にせよ、避けて通れないデメリットです。

一生一度も嘘をつかない人はいませんし、「嘘をつけない」と「嘘をつかない」は別の問題です。「何をしてるの?」という質問をする場合は、子どもの嘘とどう向き合うか覚悟を決めておいて無駄にはなりません。

必要になる場面

この何をしているの?という言葉が必要になるのは怒る時や制止する場面ではありません。その時には他の言葉を使ってください。

本当に重要なのは文字通り「何をしているのかわからない」時です。大抵の子どもの動作は大人から見れば聞くまでもなく何をやっているのか筒抜けです。ですが時に何のためにやっているのかわからない、何がしたいのかよくわからない場面に出くわす時があります。

更に大体の見当はついていても、もっと詳しく何をしているのか知りたい時があります。こちらも言葉を尽くして嫌がらない限り根掘り葉掘り質問してみましょう。

使用例

「今何をしてるの?」
「それは何のためにしているの?」
「さっき何をしていたの?」
「何がしたかったの?」

使用後の注意点

「何をしてるの?」と聞かれて答える子どもの返事は、時には聞き取りづらかったり、要領を得ない時があります。ここで「へー」「ふーん」等と生返事で話を流してしまうのはやってはいけません。

「自分から尋ねておいて失礼」ということもありますが、子どもは相手が理解しているのかどうか表情から巧みに読み取ります。せっかく答えても話半分にしか聞いてくれなければ、次から答える意欲を失ってしまいます。

わからない部分は違う言葉で聞き直して、最後には「それはこういうことなのね」と大人の言葉で言い直して正解かどうか確認しておきましょう。語彙や表現力の発達にもなりますし、なにより「大人が理解してくれた」という意識を持つことが関係性において大切です。

応用

最初は何しているのかの質問に「遊び」「テレビ」等の単純な一語文で答えるかもしれません。質疑応答の練習としては第一歩はそこからで十分です。

ですが、次第に「答えづらい」質問をぶつけていくのも練習として、相互理解として大事なことです。

今はどんな気分なのか。体の具合はどうか。何を思いだしていたのか。何を感じているのか。何を連想していたのか。何について悩んでいるのか。

簡単なことから複雑なことへ。具体的なことから抽象的なことへ。単語表現から文章表現へ。子どもの応答が変化するのを確認しながら、質問を繰り返してみましょう。