「どうしよう?」相手を知る言葉

最近は子どもに言うことを聞かせてばかりだな、逆に子どもがこちらの言うことを急に聞かなくなった、そんな時には子どもの希望を大人の側から聞いてみましょう。

「どうしよう?」は「今から子どもが何をするか」だけを聞くのではありません。大人も含めた今後の行動について子どもの意見を聞いてみるのです。

とりとめもなく、話にならない意見かもしれませんが、子どもなりの考え、要望を聞かせてくれるでしょう。その中から子どもにとって緊急性の高い要求、悩み、感情を見逃さないようにしてください。

使用目的

子どもの行動や方針について、大人はついつい口を出してしまうものです。口を出すこと自体は問題ありません。本当に危険なことや心配なこともあるからです。

ですが毎回全てを先回りして子どものやり方に口を挟んでいないでしょうか?それは子どもにとって大人が考える以上の負担になっています。

「これから何をしよう」「これから何処へ行こう」子どもの心の中では、いろんなことについて希望や欲求が渦巻いています。ですが、その希望は100%かなえられるわけではありません。場合によっては半分も思い通りには行かないでしょう。

これは仕方のないことです。大人になっても完全に思い通りの生活をおくれる人はいません。判断力や理解力が発達途中の子どもであれば、尚更ある種の制限は必要でしょう。

ですが一方では大人の側から見ていては絶対に気づかないことも、子どもの視点から気づくことがあります。誰しも子どもの頃に「子ども独自の欲求不満」を感じたことがあるでしょう。

欲しい物も、行きたい場所も、やりたいことも、正に子どもならではの望みというものは沢山あります。聞いてみれば「何だ、そんなことか」と思うようなことも子どもにとっては大問題です。

望みを叶えてあげられないとしても、なるべく話だけは聞いてあげるようにしましょう。どんなことを願っているのか、何がほしかったのか、それを知っているだけでも子どもに対する関わり方が変わってきます。

メリット

要求を聞き入れてもらえないとしても、大人に自分の希望を詳しく聞いてもらうことは、かなりのストレス軽減になります。

いつも大人から「こうしなさい」「やっちゃダメ」と言われることが多いほど、話を聞いてもらえない不満はつもりに積もっています。

それは一つ一つが納得いかないこととは別に、自分で決められない、口を出せないという部分に不満を感じているのです。

「どうしよう?」と大人が聞いてくれる、話を聞いてもらえると感じられれば、自信につながり、今後の行動にも責任感が増してきます。

デメリット

聞き分けがよい子、今まで大人の意見を全面的に頼りにしていた子どもは、急に大人から「どうしよう?」と聞かれると不安になることがあります。

それはその場で「何と言っていいのかわからない」のではなく、言うことさえ聞いておけば褒められた今までのサイクルが崩れることでもあり、かなり根が深い問題です。

大人の意見を絶対視して、きちんと言いつけを守ってくれる子どもは、あまり手もかからずありがたいことが多いでしょう。ですが今後もずっと全て周囲の大人の意見に流されて生きていくわけにはいきません。

自分の意見が無い、自分の意見を伝えるのに慣れていない子どもの場合は、急に子どもに丸投げしてしまうことは避け、徐々に意見を引き出すようにしてみましょう。

必要になる場面

できれば反抗期が始まる前後には「話だけは聞いてあげる」「言いたいことだけは言う」という関係を作っておきたいものです。

これから「自分が何をするのか?」にきちんと答えられるようになって、尚かつ大人ときちんと関係ができている場合に、この言葉は必要になります。

自分のことだけでなく、まわりのことを決める場合に、さりげなく意見を聞いてみましょう。子どもが他人のことに口を出しすぎる場合は特に必要になりませんが、多くは慣れていないでしょう。

大人でも様々なことで迷うことがあるでしょう。そんな時、ちょっとだけ子どもに知恵を貸してもらう癖をつけてください。自分と直接の利害関係がない質問をぶつけてみましょう。

使用例

「友達にあげるプレゼント、何にしようか?」
「お母さんの着ていく服、どれがいい?」
「どうやって家のお掃除しようか?」
「今度のお遊戯会の曲、何がいい?」

使用後の注意点

最初の数回は意見を言ったのに採用されないと不満な顔をするでしょう。「意見は参考にさせてもらうだけ」というのは伝わりにくいニュアンスです。質問をする前に何度も「希望通りにはならないかもしれない」ことに念を押してください。

意見を聞いた後は、どんなにバカバカしかったり変な意見でも、きちんと検討してみてください。ダメな場合は理由をわかりやすく説明して、なるべく納得してもらうようにしてください。

これだけだと否定ばかりなので、子どもの不満具合によっては「他には考えがないかな?」と追加で意見を聞いてみるのもいいでしょう。その場面の余裕に応じて試してください。

もちろん子どもの意見が正しかったり良かったりする場合は、ちゃんと褒めてあげましょう。その際に意見の内容と「それを思いついたこと」を褒めるようにしてください。「次もよろしくね」と言えるようなことがあるといいですね。

子どもの意見が通った時には、子どもに責任を取ってもらうようにしましょう。もちろん社会的な責任を取ることは無理ですが、意見を途中で変えたり、投げ出したり、飽きたりする時にはダメなことだと伝えましょう。

応用

「どうしよう?」という言葉だけだと、今その場で何をどうするのかという質問ですが、これに慣れてくれば未来のシミュレーションを頭の中でするようになれます。

会話を通じて「この次はどうしたらいいだろう?」「もしも、こんな時にはどうしよう?」ということを考えられるように導いてあげてください。

仮の話を思考実験できるようになれば、それは何回も同じ場面を経験したり失敗したりすることなく行動の学習ができるということです。自然と子どもの精神的、知的な発達もすすみます。