「何が好きなの?」相手を知る言葉

二択や三択で選ぶことを繰り返しているうちに、子どもの中にも自分の好みや譲れない部分が増えてきます。言葉が増えてきくると、自分の希望や好みをハッキリと言えることが重要になります。
「自分が何を好きなのか」子どもの好みを聞いてみましょう。互いの好みを知ることは人間関係構築の第一歩でもあります。

使用目的

まず「何が好きなの?」と聞かれれば、人間は何と言っていいのか悩むものです。大人の皆さんも「ご趣味は?」「好きな有名人は?」と聞かれると、自分が本当に好きな物は何か、何と答えるのがいいのか悩むでしょう。

ですが、この悩みは深刻な悩みではありません。むしろ考えるのが楽しい種類の悩みです。子どもにとってもそれは同じです。考えているうちに自分の意外な嗜好や、好きになる基準がわかってくるものです。

逆に、考えて言葉にしなければ自分の好みは曖昧なままです。子どもにとって「○○が好きな自分」が定まれば、アイデンティティの一部にもなります。色んな物事を決める際にも「自分はこれが好きだから」と自身をもって言えるようになりますし、決める時の決断も早くなります。

また自分の好みを人に知ってもらうのは嬉しいことです。大人の側も、その子の好みがわかっていれば色々と対処しやすいことも多いでしょう。何が好きなのかリサーチすることは、お互いにとって良い結果をもたらします。

メリット

自分の好きな物について話す時は、どんな人間も楽しいものです。また、自分の好みを知っている人とは、その後も話しやすく親しみも湧きやすいものです。

子どもの中での自己認識、自分の内面を考える過程も育ちます。自分の好みを知ることは、自分を振り返る旅でもあります。

大人の側は、子どもの嗜好を知ることで思考パターンや傾向も見つめることができます。これは他の質問からは中々うかがいしれない内容です。

デメリット

子どもの時は特に、自分の好みを人から否定される、バカにされるとは夢にも思っていません。人から良く思われるように、他人向けの「自分の好み」をプロフィールにする発想もありません。

「何が好きなの?」と聞かれた答えを、あなた以外の目の前で得意げに話すかもしれませんが、それが100%他人に受け入れられるとは限りません。「子どもっぽい」「それは変だ」「他の方がいい」等と言われて、ビックリしたり傷ついたり、落ち込むこともあるかもしれません。

必要になる場面

まわりの大人が「どっちがいい?」等と選択肢を用意して答えることができるようになれば、次は「他のもっと多くの選択肢」に挑戦します。「何が好き?」はその延長線上の質問です。

この質問は「その場ですぐ選ばなくてもいい」場面で練習する方がよいでしょう。じっくり考えて、決まらなくても困らない場面の方が、子どもは落ちついて悩むことができます。

必要条件として「物のグループ分け」ができるようになった時期が目安です。漠然とした「何が好き」ではなく、「何かのグループ」の中で何が好きかを答えるためには、自分でグループ分けを意識して選択肢に加える必要があるからです。

また知識も増え、物の名前をある程度知っていなくてはいけません。これはジャンルによりますが、少なくとも質問のグループの中で3つ以上自分であげられることが目安になります。

「好きな動物は何か?」と聞くのは「キリンと虎、どっちが好き?」と聞くのとは難易度に大きな差があります。まず自分が知っている限りの動物のグループを頭に浮かべて、その中から好きな物を探すわけです。

これには「動物と動物以外の区別がつく」「知っている動物がたくさんある」「それらの特徴が(およそでいいので)思いつく」ことが前提条件になります。

使用例

「好きな色は何かな?」
「大好きなご飯は何?」
「仲のいい友達は誰?」
「面白かったお話は何ですか?」

使用後の注意点

子どもによっては、深く悩まずに「最初に思いついた物」をあげてしまうことがあります。人の好みにケチをつけるのも良くないですが、こういうことが多い場合は次の質問から導入を慎重にしましょう。

ある程度の選択肢は用意して「他には何があったかな?」「忘れているのはないかな?」と聞いて、最後に「じゃあ、その中で何が好きかな?」と聞いてみましょう。

この質問は頭のトレーニングと自己分析を兼ねていますので、もうちょっと頭を使ってほしいわけです。

逆に「一つに決められない」子どももいます。「好きな動物は?」と聞かれて、「ライオンとペンギンと熊とウサギと…」と延々好きな物をあげ続ける子どもです。これも最初の例と結果的には同じです。

そんな時は最後まで聞いてみて「じゃあ、その中で一番好きなのは何?」と再度質問してみましょう。最終的に決まらなくてもかまいません。要は頭の中に浮かんだ候補に、優劣や順番をつける過程を辿ってほしいのです。

優劣をつけると言うことは対象について深く考えるということです。それぞれの特徴や良いところを思い浮かべることができれば、この質問の目的ははたせます。

もし答えが決まらなくても、「一番好きな友達は?」と聞かれて悩んだ挙げ句に「みんな大好き」と返ってくれば、それはそれでいい話ですよね。答えが決まらないことや、決まった答えについてアレコレ言うことは避けてください。

また「好みがコロコロ変わる」子どももいます。ですが、これは子どものうちはしょうがないことです。「この前とは違うんだね?」と指摘する程度にとどめて、変更したことを責めるのは止めましょう。

応用

この質問に上手く答えられるようになってきたら、子ども自身の考えで色々なジャンルの好きな物の中で一番好きな物を考えてもらいましょう。

「赤い色とハンバーグ」「友達とおもちゃ」などジャンルを超えて比較検討することは、想像力を刺激しユニークな思考を育てます。ただ、各ジャンルの好きな物をきちんと考えて答えていなければ、この質問は混乱を招くだけです。導入時期に注意してください。

これはかなり高い思考能力を必要としますが、慣れれば子どもにとって大変楽しい遊びになります。