「何してたの?」相手を知る言葉

周りにいる大人も100%子どものことを知っているわけではありません。あなたがいない間、しばらくあっていない間の様子を子ども自身の口から聞かせてもらいましょう。

使用目的

もちろん本当に何をしていたのか心配で「何してたの?」と聞く事が多いでしょうが、この言葉には他にも色々な目的があります。

自分が知っていることを、知らない人間に口で説明することは最初難しいものです。「何してるの?」であれば大人は目の前にいる子どものことを見ながら大体の予想をすることができますが、「何してたの?」は大人が知らない情報を子どもに話してもらう言葉です。

大人が子どものことを知るのに、「注意深く見て情報を得る」から「自分から言葉で話してもらう」ことができるようになるために、この言葉を通じてトレーニングしましょう。

メリット

今やっていることではなく大人が目の前にいなかった時のことを話すことは、もっとも手軽な正真正銘の「自分だけの情報」です。「何してたの?」と聞く方は「教えてもらう」立場、子どもは教える側の立場です。

これは一時的にですが子どもに優越感を与えます。自分のことを知りたいという「興味を持ってもらっている」嬉しさだけでなく、「教えてあげる」喜びを味わうことができます。

また日常生活を送る上でも、子どもが正直に正確に「起こった出来事の報告ができる」ようになることは、とても重要なことです。子どもの言うことを信用できるかどうかは、人間関係の構築の上でも必要です。

デメリット

一番の問題は、それが「本当の事かどうか」を確かめる手段がないことです。また事実と違っていたとしても、それが「わざと嘘をついているのか」「事実を誤認しているのか」を区別することが難しいのです。

わざと嘘をついて、それが咎められなければ調子に乗って嘘をつき続ける可能性もあります。「嘘をついてもバレない」という安心感から、大人がビックリするような内容の嘘をつく場合もあります。

必要になる場面

喋り始め、乳幼児初期には自分を周囲の人間の境界をよく認識していません。子どもは自分が知っていることは全て大人も知っていると思い込んでいます。もう少し成長すると、その区別がつき始めて「ひみつ」「ないしょ」等の発想をするようになります。

大人が本当に知りたいことは沢山あるでしょうが、まずは事実かどうか確認のしやすい場面で聞いてみましょう。言葉を覚えはじめの頃は何でも喋ろうという意欲があります。うまく気分を乗せて、「相手の知らない事実を正確に伝える」練習をしてもらってください。

使用例

「私がいない間は何していたの?」
「今日は保育園で何をしたの?」
「何のテレビを見ていたの?」
「お外で誰と会ったの?」

使用後の注意点

問いかけの段階で詰問するような強い口調で聞いてはいけません。悪いことをしていない場合でも「本当のことを言ったら怒られるかもしれない」と思い、嘘をつく癖がついてしまうことがあります。

また、教えてくれた内容が疑わしい時にも、確信がない場合は「本当なの?」「嘘じゃないの?」と何度も念を押すことは避けた方がいいでしょう。(もちろん嘘だとわかっている場合は別です。きちんと嘘はダメだと叱りましょう)

あなたが知らない情報に関しては、話の途中に上手く補足したり助け船を出したりしてあげられません。そんな状況で「相手が知らない話」をきちんと順序立てて話すのは、子どもにとって大変骨が折れる仕事です。

なので、この質問は他の問いかけよりもモチベーションが下がりやすく、次から面倒くさがることが多くなります。上手に話し終わったら「聞かせてくれてありがとう」とお礼を言うのもいいでしょう。

応用

「何してたの?」の問いかけに「テレビ」「遊び」等の一語だけで答える子どもには、もっと詳しく話を聞いてみましょう。「どんなテレビだったの?」「誰と一緒に遊んだの?」など質問を小分けにして、答えやすくしてあげるのもコツです。

また話の途中には、きちんと相づちを打ち「あなたの話に興味がある」「知らなかったことを教えてくれて嬉しい」ということが、きちんと子どもに伝わるようにしてください。

最初からたくさん話してくれる子どもであれば、その内容が「起こったこと」「自分が行動したこと」「自分が思ったこと」「話の本筋とは関係ないこと」が混在しているものです。

それらを聞き終わった後に、大人の言葉で順序立てて整理して「こういうことだったのね?」と言い直してあげると、今後の語彙や文法の学習にもつながりますし、「きちんと理解してもらえた」という満足感を得ることもできます。