4一対一の対応の技術-3互いの感情

場によって感情は変わる

人である以上、自分も相手も感情があり、それは絶えず揺れ動いています。できるだけ冷静に子どもと接しようとしても、つい語気が荒くなったり口調が強くなってしまう場合もあります。子どもの側も、きちんと話を聞こうとしていても、感情が先走って途中から泣き出してしまったり、怒り出してしまったりすることが多々あります。

感情の変動は自分ではどうにも抑えられず、また変動していることに気づかないものです。逆を言えば感情の切り替わりは自分以外の者にしか客観的に見ることは難しいのです。自分のことを一番わかっていないのは自分だということです。

相手の感情の変化を見る

子どもは怒られれば不機嫌になり、褒められれば上機嫌になります。これは簡単なことですが、感情という物は短時間の変化以外にも、それ以前の感情の積み重ねでできています。その日の朝から怒られっ放しであれば感情はどんどん怒りか悲しみに向かっていきます。

怒ったり褒められたり、認められたり否定されたりを繰り返して、感情が吹き出さないように一日を終えることが理想です。またどうしても怒りや悲しみが止まらない場合は一回怒ったり泣いたりすると、その時点までの感情はリセットされます。さっきまで泣いていた子が急に笑い出すというのは、よく見る光景ですが、泣いたことによって不の感情を全部吐き出してしまったわけです。

注目するべき点

子どもを面前にして会話していたとします。うつむいたり、言葉が少なくなったり、体が震えだしたりしたとしたら子どもの精神状態はどうでしょうか。これはもう泣く一歩手前です。泣いてしまえばそれまでの会話は打ち切りとなり、話したことも約束したこともリセットされます。

逆に上目づかいになったり、顔が赤くなってきたり、言葉が急に早口になったりしたとします。これは怒りの一歩手前です。泣いた時と同様、それまでの話は全て頭から抜けてしまいます。感情のままにさせることは本人の感情の発散としては良いですが、話し合いや約束をする、次からの行動に生かすという点では全く役に立たないのです。

一歩手前で、少し時間をおいたり、こちらが口調を変えてみたりすることで最悪の事態は避けられます。本人の中でも泣かなかった、怒らなかったという言葉にはならない自信が生まれるのです。

自分の感情も変わる

大人側の感情も少しずつ変わります。子どもといることは、何かと心乱される要素が多いものです。思ってもいない失敗、わざとやっているイタズラ、悪ふざけ、何回注意してもきちんとしない部分。不の感情は大人側にもたまります。また、可愛い笑顔を見たり、ほほえましい仕草を見ることで癒されたりホッとすることもあります。

できるだけ冷静に感情がぶれないようにと大人側は振舞いますが、ついつい感情を爆発させてしまうことがあります。子どもを必要以上に(その時の失敗に対する以上に)きつく叱ったり、荒い言葉遣いになってしまったりします。子ども側は、これだけでこんなに怒られた、と理不尽な気分になりますし、周りに違う子どもたちがいたら、その子どもたちまでビックリして泣き出してしまうこともあります。

このような事はできるだけ避けてください。特に先生の場合は周りの子どもからの信用問題にまで発展します。一旦深呼吸して心を落ち着けるか、少しだけでも場を離れて気分を整えてください。自分がどれくらい怒られるのかは、子どもにとって失敗やイタズラの重大さを示すものさしです。必要以上に強く叱ったり、逆に機嫌がいいからと甘く接したりしないようにしましょう。

常に第三者の視点も持つ

向かい合った二人の人間が、共に自分を客観視できないということは困ったことで、収拾がつかなくなる場合も多い。そこでなるべく大人側だけでも冷静になることが必要になる。冷静になれるかどうかは自分次第ですが、その二人の人間の感情の動きを第三者的な客観的な視線で見る必要があるでしょう。

子どもを注意したり甘えさせたりしている時も、これが二人の関係や子どもの発達において、どのような意味をもっているのかを振り返って見る必要があります。子どもと接している時には難しいのならば、子どもと離れている時に、どのような関係になるのが最良なのか、そのためにはどのように接したら良いのかを考えてみることで、その後の子どもの感情の把握にもプラスになるでしょう。

ぶつかり合う感情

不幸にしてお互いの怒りがぶつかり合って口論になったり、子どもが怒って叩いてきたり、泣き出して収拾がつかなくなった場合はどうすればいいのでしょうか。解決策は二つです。時間的に距離をとる方法は、しばらく一人になって頭を冷やしてもらうことです。泣きたいだけ泣き、怒りたいだけ怒ればすっきりとします。よほど激しくない場合には大人がそれに付き合う必要はありません。大人の側も感情を落ち着かせることが大事です。しばらくして頭がすっきりした頃に、もう一度話を始めましょう。そして話をきちんと聞けることを褒めてあげてください。

もう一つの解決法は場面の転換です。場所を変えて話そう、ということです。少し場所を変えて場面や状況が変わると驚くほど素直に話を聞いたり、落ち着いたりすることがあります。これは何も遠くである必要はなく、隣の部屋や扉を一枚隔てただけで効果はあがります。少し落ち着けば、子どもの話を聞いてあげ、自分が怒った理由について聞かせると良いでしょう。

自分の姿勢をしっかりと持つ

子どもは何を見てやってはいけないことを学ぶのでしょうか。それは叱られるから、怒られるから学ぶのです。しかし物事にはダメと良いだけではない、様々な基準があります。それはどれくらい悪いことか、という疑問は、どれくらいの強さで怒られたかということで理解するしかないのです。

どのようなことを褒めるか、どのようなことは悪い事なのか自分の軸がぶれないようにして下さい。もしも怒ってよいのか悪いのか、どれくらいの強さで言えばいいのか、わからなくなったとします。様々な場、時間、状況、周囲の視線、複雑な条件に囲まれて、そこであなた自身が答えを出さなければなりません。家に帰って育児書を読み返す暇はありません。最適、最良でなくてもしょうがありません。できるだけ考えより良い結果を導く行動をとってください。

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