4一対一の対応の技術-5世界の共有


同じ場にいる者同士

子どもと一緒に同じ場所にいるのですが、それは本当に同じ場所でしょうか。別にヘンテコなことを言って惑わしているわけではありません。もちろん子どもと共に同じ名前の場所に立っているわけですが、それはあなたと子どもの中では違う意味を持つ場所であることが多いのです。「立場が違う」という意味は立っている場所が違うという意味です。

同じ名前で呼び、一緒にいるのですから、その違いに気づく事は稀です。でも、時には振り返り、お互いにとっての場所や時間の意味を問い返してみるのも有意義なのです。この世界に対しての認識のズレにより、気持ちや感情がすれ違うことのないようにしていきましょう。

同じ物を見ているのか?

まず大人と子どもでは視点が違います。1m視点の高さが違えば世界はまるで違って見えます。よく子どもの目線に立って話をしましょう、と言いますが、話だけではなく時には子どもの目線で何が見えているのかを自分で確かめてみましょう。

視点が低いということは、前方の物を見るためには視線をほぼまっすぐ前方に向けていなければなりません。すると当然足元が見えなくなるわけです。子どもが意外な物につまづいてしまうことがありますが、これはそのせいです。逆に「足元に気を付けなさい」と言われると、前方のものが見えなくなります。自転車や通行人にぶつかるのは、このケースが多いのです。このように視点の高さだけでもずいぶんな違いがあります。

相手の立場になって考える

よく「相手の立場になって考えろ」と言いますが、これほど誤解されて伝わっている言葉もないでしょう。これは自分がもし子どもの立場だったら、あんな失敗はしないのに、ということを確認するための言葉ではないのです。子どもの立場になって考えるということは、子どものおかれた場だけではなく、子どもの思考力、子どもの視点、子どもの注意力と、全てがその子どもだったら、ということを考えるための言葉なのです。

子どもが大人だったら、ではなく大人が子どもだったらどうするでしょうか。あなたは複数の物に注意を向けることはできません。まだ手順を憶えていることは少数です。周囲を高い所から見渡しているわけでもありません。体力も注意力も長続きせず、これから起こる出来事を複雑にシミュレーションすることもまだまだ無理です。その状態で子どもはどのような失敗に陥りやすいか、それを回避するには、どのようなアドバイスをすれば良いのかを考えてください。

相手の視線はどこへ向いているのか

さて子どもの目線に立って考えてみると、世界は一変します。外を歩く時に大人は車や自転車等の動くものに注意をはらいます。同時に地面の段差や障害物に注意します。それ以上の上には視線を中々向けません。空にはさしあたって危険なものなどないからです。

子どもだったらどうでしょうか。まず地面と前方を同時に見ることはできません。動くものも気になりますが、世界の様々な色彩、咲いている花、ビルの看板、面白い張り紙など気になるものが山盛りです。自動車や自転車を運転したこともない子どもたちは、自動車がどうやってカーブを曲がるのか、自転車がよろける可能性などは一切考慮していません。次の動きが予想できないわけです。

また地面に目を移すと面白い形の石や、見たことがない虫、落ちている空き缶など、ここでも気になることが沢山あります。前方を見ようとしても、それより上にあるものも目に入ってきます。空飛ぶ飛行機、チョウチョ、面白い形の雲など、歩く時の安全とは関係ない物まで見えて気にしているのです。

相手の思考能力を考慮する

目や耳から入ってきた情報を頭で処理する時にも、子どもは子どもなりの考え方で処理します。大人と違い、重要度、優先度の位置づけがまるで違うことが大きな違いです。道路の段差は大人にとってはただの障害物ですが、子どもにとっては飛び降りたり飛び乗ったりする興味あるアスレチックの一部です。遠くにいる犬などに大人はほとんど注意をはらいませんが、子どもにとっては触ってみたい物だったり、逆に怖い物だったりと重要なイベントとして認識されます。

また音についても大人は車の音で走ってくる方向やスピードを判別できるものですが、子どもにとってはただのブーブーの音です。クラクションを鳴らされて大人は慌てますが、子どもは面白い音ぐらいにしか思っていません。耳から入ってくるほとんどの音に大人はフィルターをかけて重要でない音は聞き流していますが、遠くの店から流れる音楽、近くの子どもの靴の音、上から降ってくるヘリコプターの音等を子どもは同じ大きさで聞いているのです。一緒に歩いて視線が合ってない時には、先生や親の注意と、店の呼び込みや「いらっしゃい」という声は同じ物だと感じられてしまうのです。

ですから話がある時には、きちんと名前を呼んで視線があった上で話しましょう。子どもに言ったつもりが聞いていない、耳に入っていないということは意外に多く起こることです。

時間感覚の違い

大人と子どもとでは時間感覚も大きく違います。子どもにとって散歩している間は未知の物、興味深い物に囲まれた楽しい時間で短く感じますが、大人にとっては目新しいものも少なく長く感じます。食べられない物を最後まで食べなさいと食卓に座らされる時間は子どもにとって無限に長い時間に感じ、楽しいお出かけはあっという間に終わる貴重な時間です。

それは大体において大人が世話する部分が多ければ大人には長く感じる時間で、子どもには短く感じる時間です。逆にほとんど手をかけなくて良い場合は大人は短く感じますが、子どもには長い時間に感じるものです。この時間感覚の違いをよく理解しておいてください。

時間と空間を共有する

子どもの立場になって考えることで、子どもが空間や時間をどのように認識しているのかを知る事ができます。これは子どもが次にどのような行動をとろうとしているのかを予想するために重要な視点です。子どもにとっての理解しづらいところを把握するのにも有効です。何故言うことを聞かないのか、何故直前に注意したことを忘れてしまうのか。大人にとってわかり辛い部分が、子どもの立場に立つことで随分と明らかになるのです。

これは部屋にいる時にも、遊んでいる時にも、寝ている時にも全て同じことが言えます。同じ時間と場所にいても、大人と子どもではそれぞれの捉え方が違うのです。なのでその違いを理解した上で子どもにとってわかりやすい注意と助言をすることが大事です。

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