5一対多の対応の技術-6全体を見渡す目を持つ

一度に全体を見る

子どもの集まりの中で、大人があなた一人だったとします。周りを見回してください。そこにいるはずの全員が目に入ってきますか。これはとても大事なことです。

全員の人数をあなたは憶えていますか。特に保育園などでは時間によって子どもの登園時間、退園時間はバラバラです。今は何人がそこに居るべきなのかは分刻みで考え、把握しておくことが重要です。

誰かの姿が見えないとします。そうすれば探しに行けるでしょうか。探しにいっている間に、逆にその場はどうするのでしょう。物凄いジレンマですが、これを防ぐためには常に人数を把握し、いなくなる子どもに注意し、出入り口をきちんと見ておかなければなりません。

見えないところで何が起きているのか

全員の姿が見えたからといって安心してはいられません。子どもが全員こちらを見てくれているとは限らないのです。あなたの見えないところで何かイタズラをしそうな顔をしているかもしれません。どこかを怪我して泣いているかもしれません。

そのようなことのないように自分の居場所を時々は移動して全員の様子を把握できるようにしておきましょう。子どもの相手をしながらでも他の子どものことがきちんと目にはいるようにしておいてください。

それが困難になるようであれば、その子どもの相手は後回しです。先生は誰か一人のためだけの先生ではありません。その場にいる全員を安全に問題なく預かってこそ先生なのです。

予想と例外

どうしても見えない部分がありますが、そこは想像で補うしかありません。さっきまでの流れから判断して後ろを向いていても笑っているだろう。少し物陰に入ったが玩具を取ってすぐに出てくるだろう。トイレに入ったが自分で出来るからすぐに終わるだろう。子どもの動きを予想することは重要です。

しかし何事も例外は起こります。すぐ出てくると思ったトイレから中々出てこない時は、中で失敗しているかもしれません。向こうに顔を向けたまま段々姿勢が悪くなってきたら熱を出してグッタリしているかも知れません。

予想から外れる例外には敏感に気付くようにしてください。何よりもまずは確認することです。最悪のケースを想定して楽観的に考えないようにしましょう。

普段からの観察の重要さ

子どもの様子とその後の行動を予想するには、日々の観察が重要になります。その子どもと過ごした日々が、あなたに子どもの行動の予想をさせてくれるのです。

なので逆にまだ知り合って間もない子どもは要注意です。その子どもがあなたに見せている行動は、まだよそ行きの皮を一枚被っているかもしれません。保護者などから家での様子等の情報を集めておくことも重要です。

また、ぼんやりと眺めているだけでは情報は入ってきません。積極的にその子と関わり、その子どもの行動力や知能の情報を得ることにしましょう。普段からの情報を集めないことには、何時までたっても不確定要素が多く、油断のできない子どもとして扱わなければなりません。

日々の成長を考慮する

子どもは日々成長します。昨日まではできなかったことが今日はできるかもしれません。これはとても良いことなのですが、子どもの集団を把握する場合は困ったことを引き起こします。

昨日までは走れば追いつける位置にいると思っていた子どもが、予想外に素早いダッシュで外に飛び出してしまったり、この前までは背が届かない位置だと思っていた棚の物を自分で下ろしたり落としたりするかもしれません。

できるだけ余裕を持った環境で子どもを見ていきましょう。ハサミや画鋲を手が届かないところに置いたと思っていても、ジャンプすれば届くかもしれません。それとも自分で台を持ってきてよじ登るかもしれません。

油断は大敵です。大事故が起こってからでは遅いのです。子どもたちがどう頑張っても何が起ころうとも物理的に事故が起こり得ない環境が望まれます。

その場のコンディションを考慮する

子どもの成長とは別に、その場、その時だけの限定的なコンディションに困る場合もあります。いつもは走っていても大丈夫な床が、雨が降って濡れていたために大変滑りやすくなっていたり、いつもの水分補給量で大丈夫だった子どもが数日続いた暑さで自分でも知らぬうちに脱水症状になったりすることもあります。普段はおとなしい子どもたちが台風の前にテンションがあがって暴走してしまうことはよくあります。

また子ども本人にもコンディションの差は現れます。いつもはハサミを使える子が風邪でぼんやりしていて手を切ってしまったり、おとなしく玩具で遊べる子がたまたま苛々していたために玩具を投げてしまったりと、子ども自身も気付かない自分のコンディションに振り回されてしまうことがあるのです。これは周りの大人が先に気付いてあげて、適切な対応を行ってください。

全体の流れを感じる

これらの環境変化が集団になると束になって重なってきます。隅々まで注意しているつもりでも、どうしても抜けが出たり見えない部分があったりするものです。子ども一人一人に完全に注意をはらっていくことが最適ですが中々そのような理想的な状況は訪れないでしょう。

ここで集団全体の流れを読むことが重要になります。こう言うと難しいことのように思われますが、経験を積めば子どもたち全員の動きや流れが見えてくるものです。子ども同士の何気ない会話、行動、位置関係などから、その後を予想できるようになるのです。それまでは何をおいても安全第一で子どもたちを見守る事が大事です。

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