6多対多の対応の技術-4子どもは相手を見る

相手にとって自分の役割は何か?

大人の間でもできるだけ役割分担をして子どもに接する必要がありますが、さて本当に狙ったとおりの役割にあなたはなっているでしょうか。単に厳しいだけだったり甘やかしているだけだったりしていませんか。またはコロコロと立ち位置や言動を変えて子どもたちを混乱させていないでしょうか。

この点では、常に子どもからどう見られているのかを反省し見直す必要があります。また子どもにとって怒る人ばかりが増え話を聞いてくれる大人が少ないと、しょんぼりするだけで全く前向きな流れにはなりません。子どもからはどう見られているか、人数配分も含めて周りの大人の配役を決めましょう。

大人の中での自分

また子どもは大人から自分がどう見られているのかも気にしています。この感情は細かいところに気が付き繊細な反面、一旦気になると直前までの積み重ねが無くなってしまうような単純な心の変化です。

例えばいい子だいい子だと褒められた後でも、一回きつく叱られると自分はもう嫌われたんだ。もういらない子なんだと考えます。逆の対応でも同じ事が起こるため、あんなに怒られた後なのに一回褒めたら急に立ち直ったように大人からは見えるわけです。

一日の中でも子どもの自分に対する評価は乱高下します。そしてそれは自己評価ではなく、大人にどう思われているか、という判断なのです。この評価をできるだけ一定にするためにはきちんと前後の流れと関連付けて叱ったり褒めたりする事が有効です。さっきまでは良くできたのに今はダメなことをした、という連続感が必要です。

子どもが一日の終わりに振り返って、今日はどれだけ褒められて、どれだけ怒られたか冷静に振り返れるような対応をしましょう。

厳しい態度の人

厳しい態度とはダメなことをダメだという役目です。子どもから見れば怖い人、自分に甘くしてくれない人、時と場合によっては自分の事を可愛がってくれない人、自分の事を嫌いな人に見える場合もあるでしょう。これは大人にとっては辛い事ですが、子どもが可愛ければ可愛いほど、この役目の人は重要なのです。

子どもから見れば、この人の言うことがコロコロ変われば、わけがわからなくなるだけです。叱ったり怒ったりする時には一定の基準を自分の中に持って、どこからがダメなラインなのかをハッキリさせて置く必要があります。

子どもはめったにこの人には甘えないでしょうが、別に悪いことをしていない子どもに邪険にする必要はありません。普段は厳しい人に可愛がってもらうことは、子どもから見れば自分は今悪いことはしていないんだという自信と安心に繋がるのです。

甘えさせてくれる人

甘えさせてくれる人は、同時に慰めてくれる人でもあります。大人がこのポジションに付こうと思った時には、最初から甘やかしてしまってはダメです。どんなことをして他の大人になぜ叱られたのかを、子ども自身の口から話させるようにしましょう。

その時、実際に起こった事実と違うことを子どもが言ったら、頭ごなしに嘘をつくなと叱ってはいけません。本当にそうだったのかと、もう一度話させましょう。子どもは混乱して自分に都合の良い部分しか記憶していない場合もあるのです。

できるだけ正確に話させて、尚大人が実際見た光景と違うのであれば、「子どもの側から見ればそう見えていた」場合だってあるのです。

話を充分に聞いたその後で、次からは頑張ろう、次からは怒られないように上手にやろうと励ますのです。怒った大人が悪い、というように話を持っていってはいけません。あくまで悪いことは悪いのです。甘えさせるとは悪いことで怒られたり失敗した事で落ち込んでいる子どもを元気付ける役割なのです。

仲間意識のもてる人

これは同世代の友達だけではなく、兄弟姉妹やたまに会う人でも大丈夫ですが、普段は叱られるか褒められるかしかない子どもと外界との関わりの中で、子どもが自分の本音を話せる貴重なポジションです。そこで見える子どもの本音は、怒る側褒める側共にあまり聞くことのできない、子どもの本当の心の内なのです。

一緒に遊んだり、行動したりするだけではなく、この役割の人は普段の生活の事も、「このあいだパパと遊びにいったんだよ」「昨日ママに叱られたんだよ」と話してくるかもしれません。この時がチャンスです。詳しく掘り下げて話を聞いてみましょう。本音が聞けるだけでなく、子どもが自分の体験した事を、それを知らない人に説明するという状況はありそうで無いものです。

本当はその出来事を知っていたとしても、知らない振りをして子どもの話を聞きましょう。子どもにとってそれは自分を振り返り、言葉にして表す絶好の練習の機会なのです。

常に値踏みされている

嫌な言い方ですが、子どもは常に周りの人間を値踏みしています。この人にはどれくらい甘えられるのか、どれくらい自分の言うことを聞いてくれる人なのかです。その事は充分に覚悟して子どもと接してください。別に甘えられる立場になったからといって、それが悪いことではありません。子どもにはその立場の人も必要だからです。

いけない事は、周りの大人が何でも子どもの言うことを聞く便利屋になってしまうことです。人によって違うでしょうが、どこかで一線を引いてこれ以上は付き合えない、これ以上は言うことを聞けないというラインを決めてください。

どこまでも言うことを聞いていれば子どもからは絶対の信頼を得ますが、どうしても付き合えない事態が来た場合に、子どもにとってそれは裏切りに変わります。他の人に比べて子どもはどこまでも泣くかもしれません。子どもに必要以上の依存をさせないことが大事です。

子どもの価値観の変化

もちろん子どもは甘えさせてくれる人に最初はなついて甘えてきます。怒る人よりも自分を可愛がってくれると思えるからです。実際に他の人よりも目に見えやすいように甘えさせているのですから当然です。しかし、そのうちに子どもはそれだけでは飽き足らなくなってきます。もっと気さくに話し合える人がほしくなるのです。

そして友人という概念が生まれます。最初は同世代の子どもより、少し上や別の大人になることが多いのですが、その横の繋がりは子どもにとって大きな喜びになります。

最後に厳しい人に優しくされたいという意識が湧いてきます。いつも厳しい人が優しくしてくれる時ほど子どもにとって達成感がある場面はありません。その為に子どもは頑張って何かを成し遂げたり、苦労したりして目を引こうとするわけです。その努力に対しては周囲の大人は全員で褒めてあげることが大事です。

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