6多対多の対応の技術-5初対面の人間

役割のはっきりしない人

子どもにとって初対面の人は、子ども側から見ると得体の知れない不思議な存在です。新しく入園した園の先生や、家族以外の大人などがこれにあたります。入園してしばらくたっている場合でも、新しい先生などはこの分類にあたります。

子どもは恐る恐ると話しかけたり、または相手が話しかけてくるまで陰に隠れたり、居ないもののように振舞うことがあります。今までの役割分担が決まっていた世界に突如として現れた他人に興味があるものの、緊張して自分から上手く接する事は難しいのです。

初対面の時こそがチャンス

初対面であるがゆえに、子どもからは確定的なイメージ付けや役割付けがされていません。先入観も無ければ予想もできないのです。これはある意味でチャンスです。今から工夫次第でどんな役割にもなれるのです。今までの役割分担の中で足りない部分や効果が薄かった部分の役割を任せてみることができるのです。

初対面の大人と向きあった時、子どもは緊張と興奮で一杯です。今まで叱り役の人から言われてもやらなかったことや、褒める役の人が褒めても効果が無かった部分で、初対面の人から一言いわれただけで急にできるようになったり、素直に従ったりする事はよくあります。どうか初対面の時にその子どもとの関係性が無いことで不利だと考えないで、初対面だからこそ出来る事があることを忘れないでください。

第一印象をよく考える

さて初対面で子どもと向かい合いました。あなたはどうすればいいのでしょうか。あなたが事前に子どもについての情報を得ていたとしても、これが子どもの第一印象になります。どれくらいの距離から、どれくらいの目線で、どのような言葉をかけますか。よくよく考えてから行動しましょう。

基準としては、まず子どもの視界に入ってから近づき、子どもが怖がらない程度の位置まで来てしゃがみ、子どもの目線まで降りて「はじめまして」と挨拶するでしょう。これより遠くから立ったままで上から声をかけるのか、近づきながら声をかけ密着するまで近寄り座って話をするのか、何が正解かは子どもを取り巻く状況によって変わります。第一印象をコントロールできることを忘れず、慎重に行動してください。

自分の集団の中での新しい役割

初対面の挨拶が終わってからも、少しの間は新しい人として珍しがられ、色々な事を聞かれ、色々のアクションを試されたりします。その間にあなたは大人も子どもも含めた集団の中での新しい役割を探さなくてはなりません。叱り役、褒め役、友達役などの沢山の役割があります。今までの役割分担でバランスが取れているのなら、無理に新しい役割を見つけなくても良いのでは、と感じるかもしれません。

しかし子どもの立場で考えましょう。この新しい人はどんな人だろう、と考えた時にどっちつかずのフラフラした役回りでは子どもの印象に残りにくいのです。空気のような存在になってしまうかもしれません。無理に役割に参加しない場合でも、あなたのキャラクターを前面に押し出して行きましょう。子どもがあなたの事を他人に聞かれて、どういう人かを一言で説明できる間柄が理想です。

しばらくはイメージを崩さない

あなたのキャラクターが子どもたちに定着するまでは、なるべくイメージに合わない言動は避けてください。子どもは昨日までの積み重ねを忘れて、そういう人だとあなたを判断し直してしまいます。キャラクターは子どもが理解しやすいものなら何でもかまいません。面白い人、足が速い人、ご飯の食べ方にうるさい人、絵を上手に描いてくれる人等、他の大人と違った特徴を出すことが子どもに認知される早道です。

そしてそのイメージが早く定着するように心がけましょう。イメージチェンジする理由があるのなら、それはできるだけ早い段階にしてください。相手は乳児から幼児まで様々な段階がありますが、数週間かかる事もあれば数日で済む事もあります。

役割が定着したかどうか見極める

他の大人に頼んで、あなたの事をどう思っているか聞いてもらってください。そこで様々な子どもからいろんな意見が出てくると思います。それが統一されて揺らがなくなってくればイメージは定着したと見て結構です。あなたは共同体の中で役割を獲得したのです。

その役割は子どもとの付き合いの中で大切なものになります。安易にイメージを変えたり、他のポジションに移ろうとしないでください。そうしていけば叱り役の人が多少優しくしても、褒め役の人が多少厳しくしてもそれなりに効くようになります。

周囲の人間のサポート

役割、ポジション付けには周囲の人間のサポートも必要です。周りの大人も各個人の役割をきちんと認識して、それを有効活用するようにしましょう。よくある例が、悪い事すると○○先生に叱ってもらうよ、という言い方ですが、これは役割分担をきちんと相互に理解しあって確認が取れていれば有効な手段です。

ただしそれを違った方向に使うのは厳禁です。厳しい役の人が便利な怒り屋になってしまうことにもなります。また、優しい先生に叱ってもらうよと脅しても、子どもは平気な顔をしているか、混乱するかのどちらかです。また築き上げてきたイメージが崩れる原因にもなります。各人が役割を持ち、それを有効に生かすためにきちんと自分の役割を把握して子どもに接してください。

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