6多対多の対応の技術-6共通の目的を持つ

一人ひとりにどうなってほしいのか?

具体的な教育目標は何でしょうか。抽象的になら幾らでも上げることができます。頭のよい子に育ってほしい、優しい子に育ってほしい、立派な大人になってほしい。そしてかなりの長期的な目標は立てられるかもしれません。東大に入れるようになってほしい、プロのスポーツ選手になってほしい、ピアノの先生になってほしい。

そして将来のことは子ども自身が決める事、という理屈もあります。これは当然ですが、ではいつの段階で決めればいいのでしょうか。思春期になって子どもが決断をしても、まだ子どもだからという理由で家庭内では却下されるかもしれません。しかし、充分に大人になってからでは選択の幅はあまりにも狭いものになっていることでしょう。一人一人の子どもの可能性を狭めることなく、子どもが選ぶ未来への下準備をしてあげることが幼児教育の意義というものなのです。

集団はどこへ向かえばいいのか?

子どもたちは遅かれ早かれ集団生活に入る事を強制されます。たとえ保育園、幼稚園に入らなかったとしても小学校では集団にならざるをえません。集団生活は、もちろん社会性、協調性を養うためのものですが、その中で他人と比べあい競い合い自分の適性を知り将来の夢を持つのです。

逆に言えば子ども個人を一人見ただけでは、その子が何に向いているか、何に秀でているかはまるでわからないのです。集団としての子どもの集まりは、その差を浮き彫りにするためにあるといってもいいでしょう。

幼児時代の社会に出る前の集団生活は、差があるから向いているいないということではなく、他人と差があることを認め、それをどれくらい努力して乗り越えられるか、他人と上手く協力するためにはどれくらいの協調性が必要かをはかる実験場でもあるのです。

短期的な目標

長く複雑な問題も細かく分解していけば単純な問題になります。短期的な目標としては、なるべく単純な子どもにとってもわかりやすい目標を立てましょう。服を着るのにも、前後を区別する、袖を通す、ボタンをとめる等の細かい目標を一つ一つクリアしていくことが重要です。

一つ一つが短期間に習得できるようになる事で、その度ごとに子どもは自信を持つことができ達成感を味わうことができます。全体としては難しくても、一つ一つを説明されたり褒められたりする事で、子どもの側からは問題点が把握しやすくなり、自信を無くすことも少なくなります。

子どもができないと諦めたり投げ出してしまうような事は、より単純な形に直し、短期間でできるように工夫しましょう。

長期的な展望

短期的な目標を積み上げていくことで複雑な動作、行動も可能になっていきます。この段階で周りの大人の協力体制が問われます。長期的な目標になるほど、大人たちが目標を共有しているかどうかが重要になるのです。

ご飯を綺麗に食べられるようになる、友達とうまく遊べるようになる、買い物を一人で出来るようになる等の問題は、それぞれ細かく分割できますが、大人がそれを目標として認識していないと、うまくフォローする事ができません。箸の使い方を教えるのにも、どの段階でOKにするのかで子どものやる気は変わってきます。握り箸でも食べられれば良しと褒められた後に、他の大人に握り方が違うと言われれば子どもはがっかりしてしまいます。

長期の目標と現在の成長段階とを視野に入れて大人たちが情報を交換し合っていなければなりません。

将来像から逆算する

誰しも、それぞれ子どもに対しての将来像のイメージがあると思います。もし無ければ問題です、想像してみましょう。子どもは一年後どのように成長しているでしょうか、五年後にはどのような子どもになっているでしょうか。イメージを膨らませて、できるだけ詳しく想像してください。

では今度は、そのイメージに近づいていくまでの過程を想像しましょう。半年後にはどうなっているべきでしょう。三ヵ月後には、一ヵ月後には、と遡って考えるのです。そうすれば子どもが今何をできるように頑張るべきか、その為には大人たちがどんなフォローをすれば良いのかが見えてきます。

今はなにができるのか?

現実と理想は常に一致するとは限りません。子どもの成長もそうです。良くも悪くも私たちの期待を裏切って子どもたちは成長していきます。もちろん良い部分がさらに伸びていくのは大歓迎です。しかし、できないことが長期間できない時はどうすればいいのでしょうか。

親や先生によって対策は変わりますが、しばらく時間をおいて再チャレンジしてみる、休みなく諦めることなく指導し続ける、説明だけはして自分で出来るようになるまで放っておく等の対応が考えられます。これはそれぞれに効果を表しますが、大事な事はその間も大人の側は問題意識を常に持っておくことです。

そうすることで、子どものちょっとした成長の機会に試しにやってみたり、チャレンジするように仕向けたりすることができます。

チームプレー

長期的な子どもの成長に関わる大人たちは、全員合わせて一つのチームなのだと考えてください。何かのスポーツを例に出すまでもなく、チームプレーは重要なことです。誰かが活躍するためには誰かの支えが必要です。そして最終的な目標を共有しているからこそ力を合わせられるのです。

その為には綿密なミーティングやイメージトレーニング、作戦会議と役割分担が必要になります。子どもの成長一つで大げさな、と考えないでください。確かに大抵の問題は子どもがいつの間にか一人で解決してしまうことが多いですが、それ以上の壁を子ども一人で超えられるようになるために、このチームがあるのです。

一丸となって子どもと接して、無事な成長をみんなで喜びあえるようになりたいものです。

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