2何が出来るのかを見つめる-6その他の生活行為

排泄

オムツの段階からトイレトレーニングを終えるまで、排泄は育児の中の重要な比重を占めています。ですが段階的な成長もありますが、排泄に関わることは幾つかの要素に分けることができます。

一つ目は自分が排泄をしたかどうかの感覚です。これは一種の満足感を得るのと同時に、排泄物が付着した不快感も伴います。おしっこの方はオムツの改良進化のおかげでほとんど不快感がない物が登場しましたが、ウンチの方は付着感もあり、自分が排泄をしたことは生まれてすぐにわかるようになります。次は排泄したい欲求を事前に知ることができるかです。

トイレトレーニングの第一段階でもあるこの部分は重要ですが、乳児にこの感覚がどこまであるのか、我慢をする状態が訪れない限りわかりません。その次にどれくらい排泄を我慢できるのかを本人が認識できるのか、という要素がきます。これは子どもの経験の積み重ねとコンディションに左右されるため、本人にはなかなか自覚ができません。

オムツを付けている間に、自分がオシッコとウンチのどちらをしたいのか事前にわかるようになる必要もあります。これは意外と分離が難しく、周囲もどちらかわからないため、トイレトレーニングの初期ではとりあえずどちらでもできるような状況で練習をします。

また、不潔感(不快感ではなく)の認識も大事です。ウンチやオシッコは触ると汚いもの、ズボンやパンツについているのはおかしいことがわかる必要があります。それ以外に、パンツやズボンの着脱が自分でできるのか(脱ぐ方だけは先にできるようになる場合が多い)、尿意や便意を周囲に伝えることができるのか、トイレの場所の認識、トイレのドアの開閉や便座の上げ下げ、水洗のスイッチ操作など排泄に関わる能力には様々な要素が絡み合っています。トイレトレーニングをはじめる場合は、子どもの現時点での能力、認識をこまめに把握しておくことが大切になります。

着替え

最初に着替えを覚えるのはパンツの上げ下げである場合が多いでしょう。これは排泄の問題とも関係してきます。これは脱ぐのは意外と簡単に覚えることが多いのですが、はく場合においては前後の区別、表裏の区別が必要なので難しく、なかなか成功しません。この時に何度も叱ったりやり直しさせていると、着脱以外のトイレにいくことまで嫌になってしまう子どももいます。そうするとトイレトレーニングがやり直しになったり、他の服の着脱も覚える気が無くなってしまいます。子どものやる気をそがない範囲で優しく注意していきましょう。

服の着脱は表裏、前後、着る順番など子どもにとっては認識も難しく、手順も複雑なことなのです。わかりやすい説明を心がけて、やる気が出るようにしていきましょう。絵が描いてある方が前、模様がついている方が表などの子どもにもわかりやすいルールを教えてあげましょう。

またボタンの着脱ですが、これも着替えを嫌がるようになる要因の一つです。練習のためとボタンの多い服で練習する方法もありますが、あまりお勧めできません。手先の器用さも必要ですが、ボタンをきちんととめようとする動機付けの方がはるかに重要だからです。少ないボタンの服からはじめるか、多い場合は上から子どもがとめていき、下から周囲の人間が手伝うなどの方法で一回一回の達成感を実感できるようにしましょう。ボタンのかけ違いも、最初の段階で確かめる方法をきちんと教えておきましょう。

余談ですが服の購入の際も若干の注意をしてください。模様やマークのあるほうが前、と練習しているのにバックプリントの背中に模様のある服が一枚紛れ込めば、子どもは大混乱です。またTシャツや部屋着などはそのルールでもいいですが、ジャンパー等は大抵背中に模様があります。これも「上着」という概念が出来上がるまでは大きな障害です。またデザイン的に裏表に見える服がありますが、これも混乱の元です。子供服の購入の際には「これを自分で着れるようになるにはどう教えれば」と考えるようにしてください。

入浴

入浴は好きな子どもと嫌いな子どもにハッキリとわかれます。入浴の手順は衣服を脱いで(脱がされて)体や髪をゴシゴシと洗われ、洗剤が目や口に入ったりするのを我慢しながら、お湯に一定時間以上浸からなければならず(自分が飽きても出ることが許されない)、あがってからも髪や体をゴシゴシとタオルで拭かれて服を着なおしてドライヤーの熱や騒音に耐えなければなりません。短い時間ですが、子どもにとっては苦痛を伴う場合が多いのです。

では、好きになる子どもはどうでしょう。単純に水に触れるのが楽しかったり、水遊びが好きだったり、お風呂内での父母とのコミュニケーションが好きだったりと、幾つか理由はあります。嫌いな子は上手くお風呂を楽しめていない可能性が多いのです。入浴の必要性を理解するのは子どもにはなかなか難しいものです。できるだけ入浴自体を楽しく過ごせるように言葉かけして、好きになってもらいましょう。

また将来の清潔感の発達のためにも、入浴後に「きれいになったね」「サッパリしたね」などの声かけも重要になります。自分で体を洗う段階に達するためには、きれいにする、清潔にしたほうが気持ちよいという感情の発達が大事なのです。泥だらけになったときや、ひどく汚れたときは逆にチャンスだと思ってください。汚い汚れがみるみる落ちてきれいになっていくのを目にする事ができます。これをオーバーすぎるくらい子どもにアピールしてください。

重要なことですが他の場面に比べても入浴時はもっとも事故がおきやすい場所です。泡や濡れた床による転倒、熱いお湯による火傷、浴槽内での転倒で溺れたりすることもありえるので、目を離さず転んでもすぐにフォローできる体勢で入浴のサポートをしましょう。また濡れたままの髪や体などは風邪の原因ですし、耳に入ったままの水は中耳炎の原因となります。あがった後のサポートも忘れないようにしてください。

歯磨き

歯磨きも子どもにとっては何故やらなければならないのか不思議な習慣の一つです。虫歯の害、歯が痛くなる等の理解はなかなか難しいものです。ばい菌をやっつけて口の外に出してしまう、という説明で上手く子どもが納得してくれるようにイラストやお話を使って説明したいものです。何度か歯が痛くなっても、それを歯磨きと関連付けて考えられるようになるかは微妙な問題です。「ちゃんと歯を磨かなかったから悪い」と言われても、毎日毎日の習慣を怠ったから突然歯が痛くなる、つまり予防するという概念の獲得は難しいことなのです。これも入浴と同じように、歯磨きのたびにきれいになった、サッパリした、ばい菌がいなくなった、とプラスのイメージを持てるように言葉かけを続けていきましょう。

歯磨き後のうがいですが、これも上手くできずに飲み込んでしまうことが最初は多くおこります。食事の時に口に入れた物を出したり、吹き出したりすれば怒られるのに、何故歯磨きの後だけは出さなければならないのか理解しにくいのです。先のばい菌を口から追い出す話や、口の中のゴミを出してしまう等のわかりやすい説明で吐き出す理由をきちんと教えていきましょう。また、単純に口から吐き出す動作が難しい子どももいます。そのような場合は口に水を含んでピューと吹き出す遊びなどを通じて、吐き出す動作の練習をしてみましょう。

手洗い

手洗いも清潔感の感覚が身につかないと動機付けが難しいことの一つです。歯磨きと虫歯のようにとは違い、手洗いをしなかった場合の結果がわかりにくいのも原因です。実際には風邪の菌や様々な雑菌がついているのですが、それが及ぼす実害について子どもは想像できないのです。

ばい菌の話などを説明するのはもちろんですが、ではどれくらい洗えばいいのかも子どもたちには不明です。この場合は逆に泥だらけになった時や粘土遊びで手がヌルヌルになった時などが、きちんと手順を教えるチャンスです。石鹸を付けて手を洗っていくうちに手がどんどんきれいになってきて、さらさらな感覚が戻ってきます。これは子どもにとっては面白いことで、楽しく感じることができます。これを子どもに意識させて褒めていくことで手洗いの子どもの中のイメージを高めていくことができます。

また手洗いから目を離すと水遊びに移行する子どもも多くいます。大人としては水がもったいないのですが、子どもには「節水」という感覚はまだわかりません。他の理由(手が冷たくなる、風邪をひく、服がビショビショになって気持ちが悪い)でもいいのでやめさせるようにしましょう。逆に水遊びがしたいのなら、入浴のときに思う存分やってもらえばいいのです。

片付け

片付けについては大人でも苦手な人がいるのではないでしょうか。それは片付けという言葉が含むあいまいな定義のせいだからです。「片付けなさい」と子どもに言う場合、いったい何をどうすることを指しているのでしょうか。それは非常にあいまいで、言った側にもおよそのイメージしかないため、子ども側でも何をどうすればいいのかわかりません。子ども側には散らかっている、片付いているという基準すらあいまいなのです。

子ども側にも理解しやすい簡単なルールを決めることから、片付けの練習は始まります。「遊びが終わったら、他の事をする前に、おもちゃを全部この箱の中に入れなさい」という課題から始めてみましょう。これでも子どもにとってはあいまいな表現に見えます。遊びの終わりとは何か。実際にはご飯の時間になったり、寝る時間になったりの意味です。おもちゃはわかりそうなものですが、椅子に乗って遊んでいたり、子どもが乗れる車のおもちゃがあった場合に、それは箱には入りきれません。しかし簡単なルールからはじめることで、次第に片づけができるようになっていきます。そしたら片付けたことの利点を説明してあげてください。「これでおもちゃを踏まなくなって痛くない」「おもちゃが壊れたり無くなったりしないようになった」「おもちゃが次に見つけやすくなった」等です。

これらのことが積み重なって、他の物の片付けも手伝えるようになり、あいまいだった片付けの概念ができてくるわけです。その分、周りの大人たちもきちんと片付けているところを見せる事が重要です。周りの大人の真似をして子どもは成長するのですから。

就寝

乳児の頃は寝たい時に寝て、起きたい時に起きます。時間感覚もわからなく、夜は暗い昼は活動の時間という概念もないからです。これを少しずつ周囲がコントロールすることから、一日の時間間隔を身に付ける作業は始まります。ミルクの時間や起きている活動時間を昼に集中させることで、夜は寝る時間という習慣をつけていきます。これは急には難しく、少しずつ行う必要がありますが、一日の習慣がついて夜に寝てくれるようになると周囲の人間の負担も大幅に減り、育児にも余裕が生まれます。

こちら側からできることは限られています。寝たくない乳児を寝かしつけるのは難しいものです。しかし寝ようとしている乳児を活動させて目を覚まさせることは多少なりともできます。飲みたくないミルクを飲ませることは難しいですが、ミルクを欲しがる時に多少我慢をさせることはできます。もちろん一度にできるわけではありません。お昼寝や、夜中のミルクの回数制限などを上手く使い、夜には眠る習慣をつけていきましょう。

もう少し大きくなれば、次は一人寝の練習になります。添い寝無しで眠れるようになるためです。これは不安感や寂しさとの戦いです。最初だけ添い寝することから始めますが、一緒に寝なくても、おやすみと言って電気を薄暗くして同じ部屋にいるだけでもずいぶん違います。これも眠くなって自分で布団にはいって眠る体勢になることから始めて、親は寝かしつけるよりも、そばにいて安心感をあたえるだけでもいいのです。

またある程度一人で寝て朝を迎えられるようになったら、充分に褒めてください。自分自身の自信を高めて、他の事も自分一人でやってみようという意欲につながります。

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