3環境や場を整える-2施設や園の環境

広さと環境

就学前の幼児の大部分が幼稚園、又は保育園への登園を行っています。現在は幼保一元化が緩やかに進行しているところですが急激にはこの二つの統合は難しいでしょう。

大雑把に分ければ幼稚園は就学前の「教育」を行うところ、保育園は家庭の事情で家での保育が難しい場合に子どもを預かり「保育」をするという分類になっています。

これは子どもの側にとっては厳密な区分ではなく、保育園でも幼稚園と変わらないレベルで教育を行っている所から、単に預かって日中や夜間の時間を過ごさせる所まで様々です。

子どもはここで初めて家庭以外の活動の拠点を持つわけですが、その広さや環境はどうでしょうか。プールや園庭の広さ、子どもの活動の場の広さ、場所などの点が考慮されます。現実的な問題としては、バスの巡回や、親の送り迎えのしやすさ、駅や交通機関からの距離等が選択の基準になるでしょうが、一般的には都市部の交通の便のよい場所では園庭や建物は小さく、離れるにつれて広い場所を確保することが容易になります。これは一長一短で、一概にどちらが良いとは結論付けられません。

また単に広ければ良いというものではなく、子どもの数に応じた広さが重要です。

先生、保育士の数

ここでは混乱を避けるために保育士も先生と呼ぶことにします。

先生の数の重要さは、子どもの数に応じた最低限度の人数が法的に決まってはいますが、現実問題はギリギリの数で運営しているところが多いのが実態です。それは日中の活動の中ではなく、外への散歩や自由時間の遊び、食事等の介助の場合に問題になってきます。

家庭では、一人の子どもに一人の保育者がつくのが可能なのに対して、園では一人の先生が多くの子どもを見ることになります。もちろん一人あたりに割ける時間は大幅に減ることになります。

そんな状況の中で、先生はできるだけ一人一人の子どもに目を配り、危険のないように掌握し、発達を促す援助を行うことになります。これは先生達の数と質に大きく左右されることになるのです。

一般的には保育者がパートや新人ばかりで構成されていれば、人数は多くなりますが質的には問題が多くなります。かといってベテランのスタッフを大人数で長期雇用すれば人件費が跳ね上がり、他の活動に支障が出てきます。先生の数と質は園の方向性を見る重要な点なのです。

教育、保育上のポリシー

園ごとに特色があり、運営者のポリシーも違います。全ての運営者が最高の教育、保育をしたいと願っていますが、それは叶わぬ願いなのです。

そこで何かを犠牲にしてでも何かに力を注ぐことになるのです。そして、その方向を実現するためにスタッフは日々頑張っているのです。逆に先生個人としては本当はやってあげたい、力を注ぎたいことへ注力できないこともあるのです。

日中の活動や教育に力を注ぐ所、24時間保育を実現することに力を注いでいる所、なるべく親の負担を減らそうと福祉的な意味合いを持つ所、子どもの発達を促すことに全力を注いでいる所など様々です。

それは園の活動やパンフレット等を通して知る事ができます。入園前に詳しく問い合わせてみるのも良いでしょう。

集団としての特性

一人一人の子どもをいくら大切に見守っても、多くの人間がそこへ集まるわけですから、どうしても集団としての特性が出てきます。

具体的には学年別にクラスになっている園、縦割り、全園児が一体となっての活動をしているところ、乳児だけ別にベッドを用意してあるところ等です。

これも一長一短で、同一の年代だけで集まっていれば教育的にも適した活動ができ、規律も守りやすくなります。

また全児童が一緒になっている場合は、大きな子、小さな子と一緒に生活するために、個性や能力差に対応でき、自分のポジションを明確にでき、社会性や協調性などに秀でてきます。その中間などもあるので、様々な特性があることになります。

年間行事

子どもが家にいる時は、クリスマスやお正月などの家庭行事はありますが、子どもの側からみるとケーキが出てきた日、お参りにいった日等の印象になります。

しかし園での年間行事には違った役割があるのです。それは一年というサイクルの意識付けと、事前にその行事に向かって準備期間があることです。

園によって扱う年間行事には違いが出ますが、よく幼稚園、保育園に壁面と呼ばれる壁をおおった飾りが付けてあることがあります。夏には天の川やプール、冬にはクリスマスやお正月らしい飾りを付けたりしています。この切り替えの頻度も園によって異なりますが、一年間という子どもには中々理解しがたいサイクルを実感できるように配慮されているのです。

そして母の日の前に母親へのプレゼント作りに取り組んだり、秋になればドングリで制作物を作ったりと、季節に合わせた活動をするのです。遠足や運動会やお遊戯会や卒園式など、家庭では体験できない行事も多く、子どもの良い思い出にもなります。

年間の行事の充実にはそれらの意味があるわけです。春夏秋冬の移り変わりは自宅にいるだけでは中々実感できないもの。それを定着させ、自分が過ごしてきた時間を振り返れるようにするために年間の行事があるのです。

日中の活動

日中の活動は園によって様々です。子どもを預かりのんびりとテレビを見ているだけの園もあります。初等教育のようにきちんと机に座って取り組む園もあります。季節や行事に関係した練習や準備の活動もありますが、それ以外の活動はどうなっているのでしょう。

園によって違いはありますが、クレヨンを使って絵を描いたり、粘土を使って物を作ったり、遊具を使って遊んだりと、家庭ではやったことのなかった新しい活動に子どもたちは大いに興味を引かれます。

それ以外にも工作や字の練習、英語や音楽を取り入れている園もあります。また逆にポリシーにより幼児教育時代は字を教えないことにしている園や、宗教法人が持っている園などでは礼拝や座禅等の活動も含まれることがあります。

生活面のサポート

メインになる活動とは別に、食事や歯磨き、トイレ、お昼寝等の生活面でのトレーニングも園によって行われます。洋服の着替えや、手洗い、うがい、靴の履き方等の一連の生活の能力を周りの子どもたちと共に学ぶ場所でもあるのです。

力の注ぎ方は園の特色によりますが、様々なことが園から帰ってくるとできるようになっていたりします。逆に園の先生から見ると昨日はできなかったことが、今日になると一人で出来ていることもしばしばです。

保護者と先生は自分の見ていない時間帯のことは、なかなか何をやっているのかわかりません。そこで連絡帳などを上手く使って子どもの発達に親と先生が協力して取り組める体勢が重要です。

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